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2008.12.06 (土)

「米オバマ次期政権の陣容発表で高まる対日要求の激化懸念」

『週刊ダイヤモンド』   2008年12月6日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 767

オバマ次期米国政権の閣僚が決まりつつある。特徴は、クリントン政権の焼き直し拡大版とでもいうべき陣容にある。その様子は、八年前、ジョージ・ブッシュ氏の政権が発足したとき、父ブッシュ政権の閣僚の多くが復活したのと同じ構図である。米国では、人材は共和党、民主党に大別されるかたちで能力知力を磨き、自分の価値観を反映する政権の誕生に合わせて活躍の場を得るという構図がよく見えてくる。

焦眉の急の財政、金融問題の担当として、ティモシー・ガイトナー氏がニューヨーク連銀総裁から財務長官に就任する。ニューヨーク連銀は米連邦準備制度理事会(FRB)の民間への窓口である。東京の米大使館勤務時代は、今回、国家経済会議(NEC)委員長に就任するローレンス・サマーズ氏らの下で、最前線に立って日本に“圧力”をかけ続けた。

クリントン政権の財務長官、サマーズ氏は54歳、華麗なキャリアをたどってきた。二十代で大学教授、三十代で財務次官、44歳で財務長官、46歳でハーバード大学の学長に就任した。だが、就任後5年で辞任に追い込まれた。同大の学長職は20年前後務めるのが珍しくないだけに、五年は異例の短さである。辞任の直接の原因は「女性は生まれつき科学や数学に向かない」との女性蔑視の発言だった。また、強引な学内運営への強い反発がもう一つの原因だった。事実、氏が辞表を提出しなければ、教授会が氏への不信任決議案を討議することになっていた。

ガイトナー、サマーズ両氏の共通項は、自信に溢れ、自分たちの信ずるところを強力に推進し、相手にも押し付けてくることだ。新政権発足で、彼らが日本に数々の“要請”を突きつけてくると覚悟しておいたほうがよい。

オバマ新政権はすでに、過去に前例のない大幅な財政赤字を出しても、経済を再生すると明言している。財政赤字というが、資金はどこから持ってくるのか。米国内にあるわけでなく、日本および中国に、大量の米国債の購入を求めることになるだろう。

もしくは、これもまたオバマ次期大統領が明言していることだが、新しい環境対策の枠組みのなかで、米国が潤沢な資金を手にする仕組みをつくることもありうるだろう。京都議定書と排出権取引の不条理についてはすでに指摘してきたが、米国が、自国には有利であっても、日本には不利なかたちの排出権取引を設計し、環境対策の大義の名の下に、日本から大量の資金を引き出す可能性もある。

もう一人、オバマ新政権で注目すべき人事は、初の黒人司法長官となるエリック・ホルダー氏、クリントン政権下で司法副長官を務めた人物だ。そこで私はどうしても思い出す。クリントン政権下の米国では、日本企業に対する訴訟が相次いだ。

日本企業は、その後の米国での事業展開への影響を考慮してか、多くを語らないが、なかでも、深刻な危機だと感じたケースがある。それは、第二次大戦中に日本の企業で働かされて不当に安い賃金しか払ってもらえなかった、劣悪な労働環境だった、心身の傷は癒やされていないとして、損害賠償を求める訴えが連発されたことだ。

訴えられたのは、米国で活躍する日本の企業だった。それら企業と、戦中に中国人や朝鮮半島の人びとを働かせた企業とのあいだに、直接の関係がなくとも、日本の企業として責任を取るべきだという乱暴な主張だった。

なぜ今、米国で訴えられるのか。日本人にはとうてい理解できなかったが、請求総額は一兆ドルといわれた。その訴えを黙認したのが、共に弁護士であるクリントン夫妻、司法の要にいたホルダー氏らである。ヒラリー氏も国務長官に就任する可能性がある。日本にとっては困難な日々がくる。だからこそ、真の自立国としての土台づくりを急がなければならない。

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